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もったいないからはじめよう!  「コロナ禍の中でのSDGsともったいないの社会をめざすセミナー」

10月28日(水)14時から16時30分、ウインクあいち(愛知県産業労働センター)にて「コロナ禍の中でのSDGsともったいないの社会をめざすセミナー」を開催しました。

・主催:生活協同組合コープあいち、(一社)循環資源再生利用ネットワーク

・後援:消費者庁、愛知県、中日新聞

コロナ禍の中での開催でしたが、160名もの多くの皆様の参加をいただきました。

農水畜産業生産者、食品製造、加工業者、環境、リサイクル業、再生可能エネルギー、大学関係者、学生、医療関係者、行政(名古屋市、岡崎市、愛知県、岐阜県等)、フードバンク、子ども食堂、給食センター、消費者、生協組合員および役職員

〇開会挨拶:生活協同組合コープあいち

理事長 森 政広 様

「一人ひとり、個人として、事業者として、この取り組みを一歩踏み出す契機になればと思っています」

〇基調講演:消費者庁消費者教育推進課食品ロス削減推進

室長 杉田 敬一 様

日本の食品ロスの現状、食品ロスの削減の推進に関する法律についてご説明頂きました。 食品ロスの削減推進に関する基本的な方針のキーワードとして「国民各層が食品ロスの問題を<他人事>ではなく<我が事>として捉えて頂きたい。その問題を頭で<理解>するだけではなくて<行動>に移すこと」が重要と強調されました。SDGsと同様に一人ひとりが自分の問題として行動することが、この問題の解決につながる道であり、一人ひとりが我が事として考えていくこと、その主役が私たち消費者だと考えています。「我が事」として「行動」しましょう。

〇基調講演:愛知工業大学

教授(プロジェクトリーダー) 小林 富雄 様

「ポストコロナ社会の食品ロス対策」をテーマに、食品ロス問題が従来の環境問題とは違うこと、また旧来型の経済学では対応できないことなどをわかり易くご説明頂きました。

食品ロスは基本的には需給調整の問題、食べられる量以上につくれば捨てられる。旧来型の経済学から脱却しないといけないのかと思います。環境経済社会の統合的な発展というそういう方向性が凄く重要でSDGsの手法が使えるのです、社会と環境、経済(人とひととのつながり)をどうバランスよくやっていくのかがSDGsの本質だと理解しています。

一つのアイデアですが、食品ロスを削減しようということより、食の偏在の解消に統合していくというのも有りではないか。何故、捨てられるかというと、安いと捨てられる。原価率の高いもの、次の世代、おいしいものをマーケットで流通させることを本当に考えないといけない、長期的に考えていかないといけないと思います。

ポストコロナの新しい食品流通は、質的な需給調整、チャネルを変える、加工度、見せ方を変える、量より質へ(お祭りから成熟した価値提供へ)と進むように思います。 短期的にはモビリティの変化(消費者物流の消失と優雅さの演出)、長期的には巣ごもり消費の高度化(照明や食器・カトラリーなどの演出)などです。

〇パネルディスカッション

テーマ: 食品ロスの削減をするためには何が必要なの?

 消費者にできること、事業者にできること、地域で取り組めることは?

パネリスト

・コープあいち専務理事 箕浦明海様

・認定NPO法人セカンドハーベスト 名古屋理事長 山内 大輔 様

株式会社デイリーファーム 代表取締役社長 市田 真新 様

イチビキ株式会社 代表取締役社長 中村 光一郎 様

・モデレーター:プロジェクト委員 中日新聞社 編集委員 飯尾 歩 様

各パネリストからの事例報告

・生活協同組合コープあいち 専務理事  箕浦 明海 様

コープあいちは食を中心とした事業・活動を行っている中で、消費行動(エシカル消費など)やくらしのあり方(食育など)を見直しながら、持続可能な食の循環を推進しています。コロナ禍の中で学校給食が休止し、牛乳が大量に行き場を失った際、せいきょう牛乳の利用の呼びかけをしたら、組合員がそれに応え普段より2,3割利用が伸びました。店舗では、ショーケースに「手前から買うも立派な貢献」と書いたポップを売り場に設置し、賞味期限切れでの廃棄ロスを防ぐ手立てをとっています。一人ひとりができる身近な取り組みを皆で協力し合うことにより、豊かな地域、地球の環境を守る、公正な社会、人々の「生きる」を支えることにつながると思います。

・認定NPO法人セカンドハーベスト 名古屋理事長  山内 大輔 様

食品ロスの削減という観点で見ると正直言ってフードバンクは食品ロスは減らせない、120ある全国のフードバンクでの扱い量は4千トンですが、一方食品ロスの量は600万トン。フードバンクの扱い量は僅か0.1%です。食品ロスを減らすのにフードバンクは殆ど貢献しません。では意味がないのかというとそんな事はありません、フードバンクとして意味があるのは「人が食べる」ことです。人が食べるためにつくられたものを人が食べること、ここに意義深さがあります。 食品ロスを減らす時に重要なのは3つ、リユース、リデュース、リサイクル。これあまり知られていないんですけれども優先順位があります、 一番優先するのはリデュース、減らすことです。食品ロスも同じようにリデュース、そもそも発生しない様にすること、そこが一番重要です。次にリユースこれはカタチそのまま使うことです。ここがフードバンクに該当します。私たちフードバンクの活動は食品ロスを量的に減らすことは少ないのですが、意義深さで言えばとても意義深いと考えています。企業が食品を寄付し、行政が困っている人の情報を提供し、市民がボランティアとして活動してくださいます。地域の企業、行政、市民、夫々の主体が夫々の役割を持って困っている人たちを助け合うというまちづくりにつながるのがフードバンクの活動です。

・株式会社デイリーファーム 代表取締役社長 市田 真新 様

2009年から地元の米農家と連携して、鶏を飼って「米たまご」を生産しています。生産においては1日あたり15、6トンの排せつ物(鶏糞)が365日でます。これを発酵鶏糞、有機肥料にして、地元の田圃でつかってもらい、農薬を使わず米を作ってもらい、飼料米として鶏に食べさせる取組みをほぼ10年やってきました。苦労してやってきましたが皆さまのお陰で続けることができました。普及に苦労しておりまして、こういう取り組みをなんとか知ってもらわないといけないと思って「あいちの米たまご」という名前にしました。普及しないと意味がなくなります、店をつくって米たまごをつかってプリンやシュークリーム等スイーツをつくりました。オムライスやたまごかけご飯の店もつくりました。サラダも人気があります。そのサラダは地元の、店の前で野菜をつくっています。生産者、消費者の皆さんとも結びつきが深くなって地域が元気になっていけばと思って取り組んでいます。

・イチビキ株式会社 代表取締役社長 中村 光一郎 様

食品製造業者として、日々の事業活動で事業系食品ロスを発生させてしまっていることを深く反省しております。販売と生産の需給調整を適正化していくことが必要なのですが、欠品を恐れるがための過剰な販売見込みと実際の販売数の乖離、天候気温の要因、関連する生鮮素材の相場の影響など、難しい問題を抱えながらロス削減の取り組みを進めています。 弊社は家庭用商品として鍋用スープを販売しておりますが、ご家庭での鍋料理は手軽で美味しいだけでなく、冷蔵庫の野菜や日配品の在庫整理にもなるというお客様の声も聞いております。食品ロスの内、半数近くを占める家庭系食品ロスの削減に少しでも寄与する取り組みもしていかなければならないと感じています。今秋からの取り組みですが、冷蔵庫で余りがちなレモン汁やソースなどの調味料と弊社の「献立いろいろみそ」を合わせたアレンジをレシピブックとして添付を実施しております。 また、味噌醤油醸造メーカーとしての取り組み事例としては、発酵の力を活用して、通常では未利用資源として廃棄されるウナギの頭部を魚醬(ぎょしょう)にするという試作を春から行っています。さらに、豊橋の魚肉練り製品メーカーの「ヤマサちくわ」さんとの取り組みとして、製造過程において未利用になる生鮮魚のアラ部分を利用した魚醬つくりを、平成29年から続けています。今秋からは、この魚醬仕立ての「おでんつゆ」と練り製品のセット品も発売となり、売れ行きも好調と聞いております。

・ディスカッション                           

モデレーター 中日新聞社 飯尾 歩 様

恵方巻きの社会問題の火付け役になったヤマダストアーさんは、消費者に「なくてもがまんしてください」「たくさん売りません」とはっきり言えたことが大事なことでした。業界から多少バッシングがあったと聞きましたが、売れたから次の年もっと売ろうとはしませんでした。消費者との信頼関係ができたこと。大量生産、大量消費、大量廃棄を打ち消したこと。信頼関係をどう築くということがポイントだったと思います。市田さん、地産地消のレストラン、地元の方との関係は大きいと思いますが?

・市田 真新 様                            

信頼関係だと思っています。米たまごをつくるとき米農家と提携しました。消費者のみなさんとの信頼があって、少しでも飼料米をつくれば田圃の機能が上がります。なかなか常滑では鶏糞を利用してもらえなかったのを使ってもらえるようにしました。消費者のみなさんが「利用しましょう、買いましょう」と言ってくれないと生産できないことを感じました。5年か6年くらい前に飯尾さんの論説で、名古屋大学の生源寺先生が、「世界一鋭敏だった日本人の味わう力、食べる力が衰えてきた。良いものをつくろうとしても、良いものを選ぶ力がないとできなくなる」とおっしゃっていました。生産しながら地域も元気になることは、皆さんがいてこそできることです。信頼関係が大事で、深い結びつきが大事です。米農家、消費者、それをつなぐ生協、流通、心の距離を縮める仕組み、サービス、思いのこもったものをつくるものづくり、そういうもののがとても大事です。

・飯尾 歩 様                             

問題の基本はそこにあります。食べ物だけでなく、政治も有権者が選ぶ力が弱くなっています。チラシに買わされています。だから余分なものを買ってしまいます。買わせるというのもマーケティングですが、有価物が無価物になったとたんにゴミになります。食べ物を廃棄するのは自分だから我が事で、基本は発生抑制だと思います。セカンドハーベストに持って行けばいいのではありません。消費者と生産者の関係性の結びつきについて、食品ロスの発生抑制の観点から考えてみたいと思います。今回は、研究者、流通からの問題提起ということで中締めにしたいと思います。

〇愛知県からの報告 「食品ロス削減に向けた取組」            

愛知県環境局資源循環推進課 主任 深津 章文 様

昨年度、県内の家庭系食品ロス量調査を実施しました。県内6市(豊橋市、岡崎市、一宮市、半田市、春日井市、豊田市)の生活系可燃ごみを調べたところ、生活系可燃ごみのうち約6分の1(16.2%)が食品ロス(直接廃棄、過剰除去、食べ残し)でした。調査を行っていない県内の市町村についても、調査市と同様の分別方法、収集形態と仮定して、調査市の食品ロスの割合と各市町村の生活系可燃ごみの収集量から、県内の家庭系食品ロス量を推計したところ、約21.5万トンとなりました。この量を、県民一人一日当たりに換算すると約78g(食パン約1枚)となり、環境省の推計値(約62g)よりも多い結果となりました。    動画やすごろくなどで食品ロスについて学ぶ小学生向けの環境学習プログラムを作成しました。指導者向けに、プログラムの流れ、指導のポイント等が記載されたマニュアルも作成しました。愛知県食品ロス削減Webサイトで、動画の視聴やすごろく等のダウンロードが可能です。動画が収録されたDVD、すごろく等の貸し出しも行っていますのでご活用ください。

〇閉会挨拶 岐阜薬科大学 

学長 稲垣 隆司 様

 ご参加頂きありがとうございました。貴重ないろいろなお話を聴かせて頂きました。私自身も生活を振り返ると反省しきりです。皆さんも、そういう思いではなかったかと思います。日本は資源が乏しい国で、持続可能な社会をつくるのは大きな課題です。こういう会合、セミナーに参加される皆さんは非常に意識が高いのではないでしょうか。世の中に普及させるためには、こういうところに参加していない人がやらないといけないと思います。PRする、広める力になってもらわないといけません。もったいないプロジェクトは、SDGsにつながる大きな取り組みです。「つくる責任、つかう責任」は、世界どこもまだ低い状況です。地域、隣人、家族、少しでもいいからやりましょう。「まず3日やる、次に1週間やる」これを機会に世界に誇れる持続可能な社会をつくりましょう。まだまだ新型コロナウイルス感染症終息のめどはついていません。感染しないようにしながら、日頃から取り組んで頂きたいと思います。

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